2012年8月5日日曜日

再び札幌へ

すっかり間があいているのに
無理矢理知床旅行の記事をアップした最近。

そして、今から再び札幌へ。

まさか、また行くことになるとは
今年の頭に仕事を引き受けたときは思いも寄らなかった。

縁だなぁ、と思うし
今年はそういう年なんだろう。

今回の滞在は1週間未満。
取材と打ち合わせ&シナハン。

あまり長くは滞在しないけど
3ヶ月程住んでいた場所に
もう一度訪れ
違う季節に街にいるという
そのときの自分の気持ちに興味がある。

普通なのかな。
すでに懐かしかったりするのかな。

とりあえず、東京や関西よりも過ごしやすいことに期待したい。
本当に頼みます、大陽さま。

…と思っていたら、雨なんだとか!
いやいや、晴れてていいのですよ…涼しければ。
雨はあまり好きじゃないのに。

東京は晴れている。
蝉が朝から元気に叫んでいる。

よく見ると東京タワーとスカイツリーが見える自宅の屋上。


2012年8月3日金曜日

オードリー

「かーすが」
ではなく、
「ヘプバーン」のほう。

京都での仕事のついでに
実家に帰ってきた。

半年以上ぶりの実家。

久々に受けた、連日の外での仕事と
関西方面の蒸し暑さに
体が思うように動かなかった私は
何かエネルギー補給しなくては…と
冷蔵庫の前に立った。

冷蔵庫の扉には
家庭の情報が集まるのだ、と誰かが言っていた。

今日のお買い物メモや
家族への伝言板など
使い方は各家庭それぞれだけど
うちの場合は、母トミコの趣味の場所だ。

あるとき、柴犬の写真が数枚貼られていた。

2年ほど前に死んだ、犬のモモコだと思ったのだが
よく見たら、縁もゆかりもない知らない犬の写真だった。

「これ誰?」とトミコに聞いたら
「かわいいでしょ? モモちゃんにそっくりやねん!」と
満面の笑みで、見ず知らずの犬を見つめた。

なんで本物を貼らないのだ、と
私が持っていたモモコの写真をあげたら
「わー! モモちゃん! かわいい!」と喜んで
見ず知らずのワンちゃん達の写真と並べて貼っていた。

今回の冷蔵庫コレクションは
その、モモちゃんの写真と
オードリーヘプバーンだった。

まさか実家の冷蔵庫の前でオードリー様に会えるなんて思ってもみなかったので
一瞬、悩んでしまった。

「これ、オードリーヘプバーン?」
「かわいいでしょー?」
また、トミコは満面の笑みでオードリーヘプバーンの愛くるしい顔を見つめた。

あぁ、久々の実家なのだな、と思ったら
父アキラがいつものように
「で、お前いつ東京に帰るんや?」と聞いてきた。

帰ってきたばかりの瞬間に
早く帰れの姿勢を露にするのも
お決まりだ。

「帰ってきたばっかりやっちゅーねん」

女知床一人旅 その7

二日目は朝から
森の散策。

この日ご一緒したのは
前日の知床五湖のトレッキングでも一緒だった
千葉のご夫婦。

「昨日はよく眠れた?」
朝から心地の良い笑顔で話しかけてくれる奥様と旦那様。
このお二人とはなんだか縁があるようだ。

朝一番から、遠くに熊を見つけ
興奮気味に散策がスタートした。

この日も天気は曇り。
でも、雨は降っていないし
霧も深くないし、合格点だろう。

ただただ「知床」という土地の成り立ちを聞きながら
野の花やクマの寝床などを見て
鳥の声に耳を澄ましつつ歩く。
時々、野生のシカさんが私たちの先頭を歩く。

こういう、
普段過ごせない時間の使い方が好きだ。

ある瞬間、シカが
ものすごく警戒をした空気が走った。

その目の先にいたのはキツネ。

「動物が動いた時に、その動物の目線になって、その先を見ると
何が起こっているのかわかりますよ」

ガイドさんがそう言った。

動物の目線になる。
森がどのように生きてきたか考える。

この土地の主役は人間ではない。

人間が動物の生きる世界にお邪魔させてもらっている。
そう考えるのだそうだ。

そんな考え方、したことなかった。

「知床」という土地に興味があり
死ぬ前に一度は行ってみたい場所リストに入っていたのだけど
一度来ると、また来たい、と思う場所なのかもしれない。
もっと知りたいことがたくさんある。
動物や木々、自然の生き方を見せて欲しい。

散策の途中に、前日に遠くから見た滝
「乙女の涙」の近くに行った。

双眼鏡でみたら
大粒の涙がタマのように落ちていった。
号泣している。

男は背中で泣く、と聞いたが
その裏で女は号泣していた。
なんだ。両方とも泣いてるんだ。

自然の生き方の中に
人の息吹が見える。

そんなことを思っていたら
さっきまで雲で覆われていた空が
すっかり抜け
知床連山がくっきりと
凛々しく姿を現した。





女知床一人旅 その6

「酋長の家」という
何か起こりそうなワクワクする名前の民宿に泊まった。

知床五湖のトレッキングを終え
寒さでかなり体が冷えきった
私の部屋に電話がかかってきた。

「ご飯、先に食べるって言ってたけど
風邪ひいちゃいけないから温泉に入って温まってきたら?」
少し訛りのある女性の言葉で勧められた。
年齢で言うと
うちの母、トミコくらいの年齢の女性だろうか。

お宿に泊まっていながら
こういう親しげな電話がかかるなんて滅多にないことだから
驚いたのだけど
言われるままに温泉に行った。

温泉につかって温まると
体の疲れが出過ぎて
ご飯なんて食べなくてもいいか、もう眠りたいかも。
という欲求にかられた。

そんなときにまた
部屋の電話が鳴る。

「ご飯、用意出来てるから早く降りていらっしゃい。冷めちゃうわよ」

また、トミコのような女性からだった。

これは行かないとダメなんだな、と
浴衣の帯を締めなおして食堂に向かうと
綺麗にもりつけられたアイヌの伝統料理が並んでいた。

そして、電話の主
このお宿のお母さんが
にっこり笑顔でやってきた。

「イランカラプティ」
彼女が一言目に発した言葉。

アイヌの挨拶で
「こんにちは」とか「こんばんは」とか
時間を問わず使う言葉だそうだ。

本来の意味は
「あなたの心にそっと触れさせてください」
というらしい。

なんと、優しい挨拶なのだろう、と
一気に心が緩んだ。

その後、お母さんは
アイヌ料理を一品一品丁寧に紹介してくれ、
私は味わいながら料理をたいらげていった。
ほろ酔いの気分で
ゆっくりと時間を過ごしていると
今度はお母さんが、アイヌのムックリという楽器を演奏してあげる、と
私一人のために演奏会を開いてくれた。

トランスしてしまう音楽。
少しビールを飲み過ぎたせいか
疲れのせいか
頭の中にガンガンに音楽は鳴り響いたが
決して嫌いではなかった。

ご飯を終え
部屋に戻ったら
何をした記憶もないままに
布団に倒れ込み
知床の夜はあっという間に更けていった。。





女知床一人旅 その5

旅には出会いがつきものだ。

朝、出会ったコリアンのキムと
知床五湖の入り口で再会した。

「ちょうど、帰るところだ」という彼。

朝「知床五湖に行く」という彼の決断を聞いていたので
別に出会ってもおかしくはないのだけど
もう会えないと思っていた人に
偶然再会すると、必要以上に嬉しい。

テンション高く「どうだった?」と聞くと
「知ってるでしょ? 霧ばっかだよ」と
やっぱり、霧の話をするのだった。

再び、しかし、朝より固く握手をして
テンション高いままに別れた。

「随分、国際的なのねぇ」

その様子を見ていた同じトレッキンググループの奥様が呟いた。

知床五湖のトレッキングに参加していたのは
私を含めて5名。

昨年のその日に北海道で結婚式をあげて
結婚1周年の記念に、と再び知床に来たカップルと
千葉から来ていた旅好きのご夫婦。
年齢を推測するに、私の両親よりも10歳以上は上だ。
なのに、とっても健脚でお元気で好奇心豊かな感じのいいご夫婦だった。

千葉の奥様とは
同郷ということがわかり
その瞬間から打ち解けた。

説明を聞きながら
ゆっくりと
出会ったばかりの人と一緒に歩く道。

不思議な縁だな、と思う。

すごく短い時間でも
なんとなく、お互いに適した距離感が出来上がる。

奥様がカメラの操作がわからないと言えば
私がしゃしゃり出る。

カップルが全ての湖の前で写真を撮ろうとしていることに気付けば
湖に夢中になっていっても
お父様がさっと身をひいて場所を作ってあげる。

こういう大人の気遣いや関係性は
そのときだけだからこそなのか
心地の良いものに感じられる。

肝心の湖は
キムの言っていた通り見事に霧で覆われていた。

カップルが「去年見た湖と全然違います」と言っていた。

「でもそれは言い換えれば幻想的ね」
と奥様がふわりと笑うと
確かに、とみんなで霧の景色に見ほれる。

静かに穏やかに時は流れていった。


2012年7月21日土曜日

女知床一人旅 その4

森がどうやって生きてきたのかを
考えながら歩くと楽しい。

知床五湖のトレッキングに参加したときに
ガイドの方がこう言った。

足下には熊の足跡。
数日前のものがまだ残っていた。

木を見るとヒグマの爪痕。
くっきりはっきりと遥か高い上の方まで残っていて
上まで登ったんだなぁ、ということが伺える。

エゾマツの木を見ると
何年生きてきた木かわかる。

水芭蕉の群生は
ヒグマの大好物。

この場所で暮らす動物がいて
そのために、できていく環境がある。

森の生き方を知ることは
その場所に暮らすものたちの生き方を知ることなのだ。

「クマに遭遇したら
トレッキングを中止することがあります」
と最初に言われて
「そりゃそうでしょ、危険だし」と思っていたが
もちろんそれはそうなのだが
それだけではなかった。

この場所に生きる自然界の動物や植物たち。

知床の人たちは
「その神聖なる場所に、私たちが入らせてもらっている」という考え方をする。

だから、クマが挨拶に来たら
「生活を邪魔してごめんなさいね。見せてもらってありがとうね」
と人間たちは御礼を言って去るのだ。
この場所では私たちが異物なのから。

とは言っても
クマさん達に出会ってしまったら
とんでもない騒ぎになると思いますが。





2012年6月29日金曜日

女知床一人旅 その3

霧という悪天候で
知床岬へのクルージングが出来なかった私。

午後からのスケジュールを考えると
下手に動くこともできず
だからといって、何もしないのは
旅人魂がウズウズしちゃうので
急遽、岬までは行けないけど
知床を少し感じられる
時間が短いクルージングに参加することにした。

キムは今から知床五湖に行く、と決めたようで
「よい旅を」と握手をして別れた。

クルーズまでの待ち時間
防寒対策にと持っている全ての防寒着を着込み
そして腹ごしらえにと
知床産スケソウダラのフィッシュバーガーを食べた。
これが像像以上に大きい。

北海道の魚の大きさにはだいぶ慣れたつもりだったけど
バーガーから自己主張激しく飛び出る
お魚さんにはやっぱり驚く。

お味は
スタッフのお姉さんが「自信作です!!」と鼻息荒くおススメしてくれたとおり
肉厚で、美味しくて
これは朝から食べ過ぎたな、と自分に突っ込んでおいた。

いざ、クルージングが始まると
寒くて寒くて震えながら
それでも、知床をの景色を見逃さないぞ、という
気合い満々で望んだ。

知床に関しては、ナレーションを書くために結構調べたから
少しだけ知識があった。
…とはいえ、仕事が終わると忘れてしまう程度の知識。

それでも、実際にナレーションを書くために調べた地形や
滝を目の前にすると、うっすらと記憶が蘇る。

やはり、映像で見るのと直に見るのとでは全く違う。
切り立つ岩のゴツゴツした荒さまでは
わからなかった。
下手に近づくと傷つけられそうな感じ。

印象的なのは滝の名前だ。
「男の涙」や「乙女の涙」といったもの。

「乙女の涙」のちょうど背面にあるのが「男の涙」という滝。

男は背中で泣くのだそうだ。

そのわりには結構な水量で
背中で大泣き、というなんとも
現代の男の子特有の感じに笑ってしまったのだった。